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AI活用・業務効率化約11分で読めます

営業のAI活用は何から?元営業が5工程で整理する任せる作業と残す判断

営業部門でのAI活用を、リスト作成・アプローチ文・提案資料・商談メモ・フォローの5工程に分けて解説します。AIに任せられる作業と、顧客の判断や関係構築など人が残す領域を、BizExpo.jpの文章や企画を日々AIと作っている元営業の体験から整理しました。

営業でのAI活用は、「リスト作成→アプローチ文→提案資料→商談メモ→フォロー」の工程ごとに分けて考えると迷いが減ります。AIに任せられるのは、下書きを作る・情報を整える・形式をそろえるといった「作る」部分です。一方で、どの顧客に何を言うか、いつ会いに行くか、相手との関係をどう築くかは人が決める部分で、ここをAIに渡すと営業は弱くなります。私は大手企業とベンチャーで営業・企画を長くやってきた元営業で、今は自分で運営する展示会ポータル「BizExpo.jp」の出展社・来場者向けの文章や企画を、AIと一緒に毎日作っています。その経験から、各工程でAIに頼めること・頼んではいけないことを整理しました。

この記事は、従業員5〜100名規模の会社で営業部門を預かる経営者・営業責任者の方に向けて書いています。ITに詳しくなくても読めるように、専門用語は初出で一言添えます。

営業部門でAIを使う会社はどれくらいあるのか

帝国データバンクが2026年5月に発表した調査(調査期間2026年3月17〜31日、全国23,349社対象・10,312社回答)では、業務で生成AIを活用している企業は34.5%でした。大企業46.5%に対し、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%です。活用企業の9割近くが効果を実感している一方、情報の正確性への懸念や、従業員間の使いこなし格差が課題として挙がっています。

営業部門に目を向けると、もう一つ気になる調査があります。ラクスルが2026年7月23日に発表した、従業員2〜100名の中小企業300名への調査では、中小企業のAI活用は「個人の業務効率化」にとどまっているとされました。営業現場の感覚としても、これは腑に落ちます。できる人がこっそりメール文を作らせている、資料の目次をAIに出させている。ところが、それがチームの標準にはなっていない。この「個人で止まる」状態をどう越えるかが、営業でのAI活用の本題だと私は考えています。

私の場合は、会社員時代にAIを営業で使った経験はありません。営業を離れたあとに、自分の事業でAIを使い始めました。ただ、営業のどこに時間が溶けていたかは体で覚えています。だからこそ「ここはAIで良い」「ここは人がやるべき」の線引きが、はっきり見えるようになりました。

営業プロセスを5つの工程に分解する

営業の仕事をひとまとめに「AIで効率化」と言うと、何から手を付けるか決まりません。私は次の5工程に分けて考えています。

工程 AIに任せられる「作る」作業 人が決める「判断」
1. リスト作成 条件の整理、公開情報の要約、分類の下書き どの業界・どの会社を狙うか
2. アプローチ文 文面の下書き、言い回しの候補出し、要約 何を伝えるか、送るかどうか、送る相手
3. 提案資料 構成案、文章の整え、表の整形 提案の核、価格、約束する範囲
4. 商談メモ 要約、宿題の抽出、次回の論点整理 相手の本音の読み取り、優先順位
5. フォロー お礼文の下書き、再提案文、進捗の棚卸し いつ、誰に、何を言うか

共通しているのは、左の列が「素材を作る」、右の列が「相手を見て決める」という違いです。AIは左を速くします。右をAIに委ねると、営業が「誰にでも同じことを言う人」になってしまいます。

工程別:営業でAIをどう使うか

1. リスト作成|条件を言葉にする手間が減る

リスト作成でAIが得意なのは、「どんな会社を探すか」の条件を言葉にする手伝いと、集めた情報の分類です。たとえば「製造業で、従業員50名前後、自社サイトに採用ページがある会社」という条件を、AIに「見落としがちな切り口はないか」と聞くと、別の分け方を出してくれます。

注意点は、AIが「それらしい会社名」を作ってしまうことがある点です。生成AI(文章や画像を新しく作り出すAI)は、知らないことでも自然な文章で答える性質があります。社名や連絡先は、AIの回答を信じず、公開情報を自分の目で確認します。リストの中身は人が確かめる、絞り込みの考え方だけAIに手伝わせる。この順番が安全です。

私の場合は、BizExpo.jpに掲載する展示会の情報を整えるときに同じやり方をしています。「どの切り口で整理すれば来場者が探しやすいか」はAIに案を出させ、掲載する一件一件の中身は自分で確認してから載せています。

2. アプローチ文|下書きは任せ、送る前に自分で直す

アプローチ文は、AIの効果を最初に感じやすい工程です。「相手の業界」「伝えたい要点」「文字数」「硬さ」を日本語で伝えれば、下書きは数秒で出ます。

ただし私は、AIが書いた文章をそのまま送ったことはありません。理由は二つあります。一つは、AIの文章は丁寧すぎて「どこにでもある文面」になりがちだからです。もう一つは、相手との関係によって言葉の距離感が違うからです。初めて連絡する相手と、以前に名刺交換した相手では、同じ内容でも書き方が変わります。この距離感はAIには分かりません。

BizExpo.jpでは、出展社向けの案内文や来場者向けの告知文を日々作ります。進め方はいつも同じです。「誰に、何を、どんな順番で言うか」を自分で箇条書きにし、それをAIに渡して文章にしてもらう。出てきた文章の、言い回しが固いところや自分の言葉でないところを直して、公開する。AIに任せたのは「作る」部分で、「何を言うか」は自分で決めています。

3. 提案資料|構成はAI、核心は自分

提案資料では、AIは構成案と文章の整えに向いています。「相手の課題→原因→解決策→進め方→費用」のような骨組みを出させ、各ページに入れる要点を箇条書きで渡すと、文章にしてくれます。表の整形や、長い説明を短くする作業も任せられます。

一方で、提案の核心、つまり「この相手に何を約束するか」はAIに作らせてはいけません。ここをAIに任せると、資料は立派でも中身が相手に合っていない、という状態になります。

私が注意しているのはもう一点、数字です。AIは、聞かれると「一般的には〇%改善」のような数字を出してきますが、出典のないものが混ざります。私は自分のサイトについて、AIが出した数字や事例をそのまま載せず、実測値だけを切り捨てで出すルールにしています。BizExpo.jpの表示回数は直近30日(2026年9月8日〜10月7日、GA4計測)で5,952でしたが、サイト上では「月間PV 5,000超」と切り捨てて書いています。提案資料でも同じで、盛った数字は商談の後半で自分の首を絞めます。

デザインについても一つ補足します。aisoudan.jp を2026年10月に作り直したとき、AIにデザインを任せたら「AIで作ったサイトっぽい」グラデーションや光彩が多い見た目になり、3案すべてボツにしました。提案資料でも、AIに丸投げすると同じことが起きます。「使わない表現」を先に指示する方が、結果的に早いです。

4. 商談メモ|要約と抜け漏れ防止に向く

商談後のメモは、営業がもっとも後回しにしがちな仕事です。ここはAIが得意です。箇条書きの走り書きや、録音の文字起こしがあれば、「決まったこと」「宿題」「次回の論点」に整理してくれます。抜け漏れが減り、上司や同僚への共有も速くなります。

ただし、「相手は本当は何を気にしていたか」という読み取りは、同席した人にしかできません。相手が一瞬黙った場面、話題を変えたタイミング。こうした情報はメモには残らず、AIにも渡せません。AIの要約は「事実の整理」までで、「次に何を言うか」は自分で決めます。

私は2026年7月に、Claude と Codex というAIだけで、会議管理・顧客管理・タスク管理を備えた業務システムを自作し、自社の運営で使っています。コードは書けないので、「日本語で正しく頼む」ことで作りました。会議の記録と顧客ごとの経緯、宿題のタスクが一つの画面でつながると、フォローの抜けが目に見えて減ります。使っていて不便を見つけたら、その日のうちにAIに直させています。【要確認:営業時代に商談メモや引き継ぎで困った場面について本人の実体験を追記】

5. フォロー|「いつ・誰に」は人、文面はAI

フォローはタイミングがすべてです。「いつ連絡するか」「誰に連絡するか」はAIには決められません。顧客の社内事情や、前回の商談の温度感を知っているのは担当者だからです。

一方、お礼のメール、資料送付の案内、しばらく連絡していない相手への再提案文。こうした文面の下書きはAIに任せて問題ありません。私はここでも、下書きを出させてから自分の言葉に直す手順を守っています。

もう一つ、AIに向いているのが「進捗の棚卸し」です。案件の一覧を渡して「2週間以上動いていない案件を抜き出して」と頼むと、埋もれていた案件が浮かび上がります。判断はしないが、判断の材料を揃える。フォロー工程でのAIの役割はこれです。

AIに任せてはいけない3つのこと

工程別に見てきた内容を、任せてはいけない側から整理します。

  • 顧客の判断: どの顧客を優先するか、何を提案するか、値引きに応じるか。これは相手と会っている人の仕事です。
  • 関係構築: 営業の成果は、相手が「この人から買いたい」と思うかどうかで決まる部分が大きいです。AIが書いた言葉をそのまま届け続けると、相手は気づきます。
  • 数字と事実の確認: AIは自然な文章で間違うことがあります。社名、金額、実績、法令に関わる記述は、人が出典を確かめます。

「作る」はAI、「決める」「会う」「確かめる」は人。この線を社内で共有しておくと、使い方のばらつきが減ります。

私の場合も、AIに任せたのは作る部分だけです。BizExpo.jpで何を載せるか、何を載せないか、aisoudan.jp で何を売り文句にしないか。こうした判断をAIに聞いたことはありますが、決めるのは自分です。

個人利用からチーム利用へ広げる段取り

ラクスル調査の「個人の業務効率化にとどまる」という指摘は、営業部門にとくに当てはまります。できる人が一人で使っていても、その人が異動すれば終わります。私はチームに広げる手順を次の4段階で考えています。

  1. 一人が一工程で使い切る: 最初から全工程をやろうとしません。たとえば「商談メモの要約」だけに絞り、2〜4週間使います。私自身、業務システムを作ったときに最初から全部作ろうとして止まり、一画面・一機能ずつに切り替えてから進むようになりました。営業のAI活用も同じです。
  2. 頼み方を一枚にまとめる: 「このメモを、決定事項・宿題・次回論点の3つに分けて」のように、うまくいった指示文をそのまま共有します。属人化を防ぐのは、ツールではなく「頼み方の共有」です。
  3. チームのルールを決める: 顧客名や個人情報を入力してよい範囲、AIの文章を外に出す前の確認手順、使うツールを決めます。ルールは最初から完璧でなくてよく、使いながら直していけば十分です。
  4. 工程を広げる: 商談メモで慣れたら、アプローチ文、提案資料へ順に広げます。工程ごとに「任せる・任せない」の線を確認しながら進めます。

営業以外の部門も含めた進め方は、「AI業務効率化の事例と進め方」にまとめています。

営業でAIを使うときの注意点

情報の正確性

帝国データバンクの調査でも、活用企業の課題として情報の正確性への懸念が挙がっていました。営業は外に向けた言葉を扱う仕事です。AIの文章を外に出す前に、人が読む工程を省かないことが前提になります。

顧客情報の取り扱い

商談メモや顧客リストには、相手の社名や担当者名が含まれます。使うツールの利用規約で、入力した内容が学習に使われるかどうかを確認し、入力してよい情報の範囲を決めておきます。ツールの選び方は「AIツールの選び方」で整理しています。

ツールによる得意不得意

私は日常的に Claude Code と Codex CLI というAIエージェント(人の指示を受けて自分で作業を進めるAI)を使っていますが、同じ指示でもツールにより得意不得意があります。営業部門で使う文章系のAIも同様で、一つのツールの結果だけで「AIは使えない」と判断しない方がよいです。

一人で判断しきれないとき

「どの工程から始めるか」「どこまで任せるか」は、業種や商材で答えが変わります。社内に相談相手がいない場合、外部の伴走役を置く選択もあります。私が提供しているAI顧問は、月1回のオンラインMTGで月5万円(税別)から(料金はこちら)で、営業部門の工程分解から一緒に考えます。AI顧問という形そのものについては「AI顧問とは」をご覧ください。初回は30分の無料相談で状況を伺っています。

まとめ

  • 営業のAI活用は、リスト作成・アプローチ文・提案資料・商談メモ・フォローの5工程に分けて考える。
  • AIに任せるのは「作る」部分。下書き、要約、整形、棚卸し。
  • 人が残すのは「決める・会う・確かめる」。顧客の判断、関係構築、数字と事実の確認。
  • AIの文章はそのまま送らず、自分の言葉に直してから出す。
  • 個人利用で止めず、一工程から始めて頼み方を共有し、チームの標準にする。

私自身、AIに任せたのは作る部分で、何を言うかは自分で決めてきました。営業も同じです。AIは営業を代わりにやってくれる存在ではなく、営業が相手に向き合う時間を増やす道具です。

よくある質問

Q. 営業でAIを使うなら、どの工程から始めるのがよいですか?

商談メモの要約から始める会社が多いです。外に出す文章ではないため失敗しても影響が小さく、効果を実感しやすいからです。慣れたらアプローチ文、提案資料へ順に広げる進め方をおすすめしています。

Q. AIが書いたメールをそのまま顧客に送ってもよいですか?

おすすめしません。AIの文章は丁寧ですが、どこにでもある文面になりがちで、相手との距離感も反映されません。下書きとして使い、送る前に担当者が自分の言葉に直す手順を社内の決まりにしておくと安心です。

Q. 顧客情報をAIに入力しても大丈夫ですか?

ツールによって扱いが異なります。入力した内容が学習に使われるかを利用規約で確認し、社名や個人名を入れてよい範囲を社内で決めてから使うことをおすすめします。判断に迷う情報は入力しないのが基本です。

Q. 生成AIを使えば営業の成果は上がりますか?

工程によります。下書きや要約などの作業時間は減りやすい一方、受注はどの顧客に何を言うかという人の判断で決まる部分が大きいです。浮いた時間を顧客と向き合う時間に回せるかどうかで差が出ると考えています。

Q. 社内でAIを使う人が一部にとどまっています。どう広げればよいですか?

うまくいった「頼み方」をそのまま文章で共有するのが近道です。ツールを配るだけでは広がりません。一工程に絞って一人が使い切り、指示文と確認手順を一枚にまとめてから他のメンバーへ渡す順番が進めやすいです。

参考

この記事の内容を、御社の仕事で。

IT顧問、月5万円から。AIも、クラウドも、ホームページも。営業も、新規事業も。

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この記事を書いた人

ITなんでも相談室 運営者

大手企業での営業、ベンチャーでの0→100億の営業・企画、0→10億の新規事業の立ち上げ・運営を経験。現在は展示会ポータル BizExpo.jp を1人で立ち上げ・運営しています(AI・Claude・Codex も日常的に使用)。記事は、自分の事業で実際に試したことをもとに書いています。

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